◆『みえない翼』

【『CDブック しあわせ運べるように』 144ページより】

たまたま街角で小学校の音楽会で演奏したメロディーを耳にしたときに、当時の記憶がよみがえってきて、夏休みに練習したこととか、音楽室のにおい、私と握手したこととか、皆で泣いたこととか、そんなことが思い出せたら必ず励みになる。小さいときに感動した体験がある子は、大人になっても心豊かな人になれると思うのです。
私は、そんな音楽専科としての熱い思いをエンディング曲に託しました。25歳の夏休みにつくった曲、『みえない翼』です。
音楽会というひとつの行事で子どもたちが、音楽というみえない翼を持ってほしい。そして、繰り返す練習時間の中で、心の中の翼が強く育てば、時間の壁を越えて大人になったときにも、小学校時代にがんばったことを思い出すことができる。忘れない、忘れたくない、そんな音楽会になってほしい。
曲の途中で、呼びかけ形式で子どもたちの熱い思いを込めたせりふも入ります。「ルルルルー」というハミングに乗せて、それぞれの子どもたちが自分で考えたせりふを言います。
音楽会までの6カ月間、何度も何度も歌や金管バンドの練習をし、音楽会当日のいちばん最後に『みえない翼』を歌います。しかも、今年で音楽会が最後という6年生が歌いますので、感きわまって歌の途中で涙してしまう子も少なくありません。今までの積み重ねがあるからこそ、泣くことができる。私は何度も音楽会を経験していますが、子どもたちが流す美しい涙には、毎回胸が熱くなります。



今 静かに 時は流れすぎて
楽しかった 音楽会も この曲が ラストソング
今 静かに 耳をすましていると
何回も練習してきた メロディーが 聴こえてくる
みえない翼だけど
時間の壁を越えられる 音楽という 翼をかりて
いつの日か 思い出すだろう この時を
忘れない 忘れたくない 思い出の音楽会を
忘れない 忘れたくない 音楽会よ さようなら