CD付き!(7曲収録)》
臼井先生作詞・作曲の『しあわせ運べるように』を収録したチャリティーCDブック発売中!
『CDブック しあわせ運べるように』の付属CDは、単なる「付録」ではありません。
単独のCDとしても成立する充実した自信の内容です!
本書のために新たに録音しました。
子どもたちの素直で澄んだ歌声と演奏が響きわたります。
それは、希望の歌に聴こえるかもしれません。
あるいは、鎮魂の歌に聴こえるかもしれません。
あなたの心に素直に届き、涙が自然とあふれてくるでしょう。
そして、自然と元気が出てくるでしょう。
あなたに、しあわせ運べるように。
【ライナーノーツに代えて】
CD収録にも「音楽の天使」は来てくれた
その歌は突然にやってきた。今から11年前の2000年1月22日。神戸国際会館大ホール。ピアニスト辻井伸行さんの母・いつ子さんの初めての著書『今日の風、なに色?』をつくっている頃、伸行さんが阪神淡路大震災復興チャリティーイベント「神戸音楽祭2000」に出演するというので、神戸に出かけていった。
当時小学校5年生だった伸行さんがピアノソロでクラシックを2曲、その頃から抜群にきれいだった音色で弾いたあと、突然、ステージにたくさんの小学生が出てきて、辻井さんのピアノ伴奏で歌い出した。
「♪地震にも 負けない 強い心をもって 亡くなった方々のぶんも 毎日を 大切に 生きてゆこう~♪」
歌詞は生々しいのに、メロディが美しい。
子どもたちの澄んだ素直な声と伸行さんのきれいなピアノは見事にとけあって、聞く者の心にストレートに届く。気がつけば涙が頬を伝っていた。他の多くの聴衆も涙を流していた。
この不思議な力のある歌はいったい何という歌なのだろう。それが『しあわせ運べるように』との出会いだった。
あれから11年。2011年3月11日。再び日本に大地震が起きた。東日本大震災。阪神淡路大震災のときも、700年に一度の大地震と言われた。今回も1000年に一度の大地震だという。わずか数十年しか生きない人間の人生の中で、1000年に一度クラスの大地震に2度も遭う私たちは、何という時代に生きているのか。
しかし、悲嘆に暮れてばかりはいられない。自分たちにできることは何か。そのとき、あの歌の記憶がよみがえってきた。神戸の人たちが16年間、大切に歌い継いできた復興と鎮魂のシンボル曲『しあわせ運べるように』。
急いで作者の臼井真さんに連絡をした。次の日に神戸で会って数時間話し合った。この歌のCDをつけた書籍をつくることになった。
臼井さんは神戸市の音楽専科教諭で、同じく神戸市の音楽専科教諭で大学も同期だった室屋尚子先生に、書籍につけるCD収録の協力を依頼した。室屋先生が指導する住吉小学校合唱部は、「NHK全国学校音楽コンクール近畿ブロックコンクール」金賞受賞(3年連続)、「こども音楽コンクール」文部科学大臣奨励賞受賞という全国レベルの合唱部だ。
11年前、辻井伸行さんの伴奏で歌った港島小学校も室屋先生が指導し「NHK全国学校音楽コンクール」の全国コンクールで金賞を受賞していた。室屋先生はいわば合唱部の“金賞請負人”。その室屋先生が協力してくれることになった。これで子どもたちの声は決まった。
4月9日兵庫県立芸術文化センター前の公園で、東日本大震災のチャリティーコンサートが開かれた。臼井先生がゲストに招かれ、室屋先生の住吉小学校合唱部が『しあわせ運べるように』を歌うというので、かけつけた。
兵庫県立芸術文化センターは、震災後、神戸復興のシンボルとして建てられ、芸術監督には今年ベルリンフィルハーモニー管弦楽団でタクトを振った世界の佐渡裕さんが就任していた。
その佐渡さんが指揮をし、芸術文化センター所属の「スーパーキッズ・オーケストラ」が演奏をし、住吉小学校の子どもたちが歌った。
センター前の公園には1000人を超える聴衆が集まり、メディアも多数来ていた。『しあわせ運べるように』の演奏が始まると、会場のあちこちからすすり泣きが聞こえる。取材陣も涙ぐんでいる。佐渡さんの目にも光るものがあったように見えた。
『しあわせ運べるように』は不思議な曲である。ピアノ伴奏で早いテンポで元気に歌っていくと「明日に向かう希望の歌」に聞こえる。
オーケストラの演奏でゆったりとしたテンポで歌っていくと、「亡くなった方々への鎮魂歌、壮大なレクイエム」に聞こえるのだ。
CDにはピアノ伴奏とオーケストラ演奏の両方の魅力を閉じ込めたい。その場で旧知のレコード会社プロデューサーが、芸術文化センターの横守プロデューサーを紹介してくれた。 横守さんは瞬時にこの企画の趣旨を理解し、「協力しましょう」と言ってくれた。
スーパーキッズ・オーケストラは小学低学年から高校3年生まで、全国からオーディションを経て選ばれた子どもたちで構成された楽団で、OBは音大や海外留学へ進んだり、コンクールで受賞するなど、プロへの登竜門。いわばオケの“U17”だ。
これで子どもたちのオケが決まった。
11年前、辻井さんに『しあわせ運べるように』の音取り指導したのは、ピアニストで東京音大講師の川上昌裕さんだ。川上さんは辻井さんを小学1年生から高校3年生までの12年間指導し、その模様は「NHKこころの遺伝子」でも取り上げられ、書籍『ピアニスト辻井伸行 奇跡の音色』(アスコム刊)にもまとめられている。ロシアの現代音楽家カプースチンの研究者としても知られるピアニストである。ご本人もプロであり、プロを目指す学生を指導する川上さんに、断られることも覚悟してピアノ伴奏の相談をした。川上さんは瞬時にこの企画の趣旨を理解し、「やりましょう」と言ってくれた。また、奇跡が起きた。
これで、ピアノ伴奏も決まった。
本書付属のCDには以下の曲が収録されている。
【ピアノ伴奏版】
ピアノ伴奏編曲・伴奏:川上 昌裕
合唱:神戸市立住吉小学校合唱部
指揮:室屋尚子
1.しあわせ運べるように(神戸オリジナルバージョン)
2.しあわせ運べるように(ふるさとバージョン)
3.しあわせ運べるように(カラピアノ)
【オーケストラ演奏版】
編曲:杉浦邦弘
合唱:神戸市立住吉小学校合唱部
指揮:加藤完二
演奏:スーパーキッズ・オーケストラ
4.しあわせ運べるように(神戸オリジナルバージョン)
5.しあわせ運べるように(ふるさとバージョン)
6.しあわせ運べるように(カラオケ)
【スペシャル版】
編曲・演奏:川上昌裕
7.しあわせ運べるように(ピアノソロバージョン)
1、2、3は【ピアノ伴奏版】とし、ピアノ伴奏編曲は従来親しまれてきたイメージを大切にしながら、より音楽性を高めた。伴奏編曲、伴奏ともにいずれも川上昌裕。
1は神戸の人たちが歌い継いできた、オリジナルバージョンである。
2は歌詞の「神戸」の部分を「ふるさと」に置き換え、東日本に捧げ、かつ全国で歌っていただけるようにした。
3は被災地で楽器がなくなってしまった子どもたちや、伴奏者がいない地域でも歌ってもらえるよう、伴奏のみを収録したカラオケならぬカラピアノを収録した。川上昌裕さんのやさしい音色にのせて子どもたちが歌ってほしいと願って収録された。
4、5、6は【オーケストラ演奏版】とし、スーパーキッズ・オーケストラが演奏した。皇太子ご夫妻が臨席された阪神淡路大震災の15周年追悼式典で佐渡裕さんが指揮をしたものと同じ編曲である。ピアノとは違った荘厳さを感じさせる見事な演奏になっている。
6は文字通りカラオケだが、杉浦邦弘さんの編曲は、歌なしで聞くと伴奏というより、あたかもオケのためだけにつくられた曲のような壮大さと美しさがある。
スーパーキッズ・オーケストラの本領が発揮された素晴らしい演奏に仕上がった。
7は【スペシャル版】とし、ピアノソロをこのCDのために川上さんが編曲し、初演奏した。音の粒がキラキラと輝き、華麗で繊細だが、前向きな意志と明るさ感じさせる一曲に仕上がった。まるで映画のエンディングテーマのような映像的な音楽の世界が広がる。原曲を作曲した臼井真さんや収録スタッフが感動の涙を流し、川上さんが弾き終わると同時にスタッフから大きな拍手がわいた。
紙幅に限りがあり、すべてを記すことはできないが、このCD収録にあたっては臼井、室屋両先生の小学校の校長、教頭先生、神戸市教育委員会の皆さんにはひとかたならぬお世話になった。
録音や会場スタッフの方々は、趣旨に賛同し、ボランティア精神で参加してくださった。
いくつかの奇跡と善意でできあがったこのCD。音楽の天使とともに、あなたにも、しあわせ運べますように。
2011年7月
録音:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール(2011年6月26日)